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馬の体
【ショックウェーブの実用性と効果とは】
魔法の治療器具とも呼ばれて大人気。
現在需要がどんどん増えているショックウェーヴの効果はどれほどのものなのか。
衝撃波を与えて 治癒速度を早める
現在、競走馬の最前線であるトレセンで、通称ショックウェーヴと呼ばれる体外衝撃波治療機器という医療機器が頻繁に使用されていることをご存知だろうか。
体外衝撃波を使用した治療としては、人間の腎結石、尿管結石などを対象に行われていて、それ以外にもサッカー選手のベッカムも疾病への治療に使用したと言われている。そして、競走馬たちに対しては骨や筋への疾病に対して使用されている。
実際にトレセンで競走馬たちに処方している松永和則獣医師に話を聞くと「効果を感じています」と話す。
「骨や筋、筋肉の疾病に対して処方しておりますが、効果を感じています。各馬、あるいは症状によって、強弱も含めて様々な調整は必要ですが、有効な治療方法のひとつでしょう。個人的な感想ですが、筋肉の疾病では筋肉痛に対して特に効果を感じます。さらに、疲労回復に対しては確かな効果を感じます。ただ、肉離れということになると発症直後ではなく、経過観察の時間を待ってから処方するようにしています。また、骨に関しては骨折に対しても治癒を早めると理論的には言われていますが、私個人としてはまだそこまで確かな手応えを感じてはおりません。ただ、骨膜に対して、痛みを取り除くという経験がありました。土曜日に競馬を走って、帰厩すると、ソエの痛みが激しく、触れることもままならない状態だった。そこで、日曜日にショックウェーヴを処方してみました。すると、全休日明けの火曜日には、何と痛みがなくなっていたのです。冷却はしてもらいましたので、その効果もあったのでしょう。しかし、経過を観察したかったので消炎剤は投与しておりません。それでいながら、全くと言って良いほど痛みが消えていたという経験を目の当たりにしたのです」
一方で、馬を管理する調教師のなかでも、効果を感じている方もいる。勢司和浩調教師もそのひとり。
「効果は感じております。僕自身としては、刺激を与えて、血行促進を促すことで、治癒の促進を図る効果があると考えて、処方してもらっております。骨の強化を図るには、刺激が必要不可欠とされております。ショックウェーヴの衝撃派に関するその効果の度合いは正確にはわかりませんが、疾病を治癒しようとするときに、衝撃によって血行が促進されることで、その効果となって表れているのではないかと思います。ただ、衝撃の度合いに注意しなければ逆効果になりかねませんので、そこは注意が必要でしょう。ウチの厩舎では、いまどちらかと言うと、筋肉の疾病に対する処方が増えています。特に筋肉の奥深い部分の血行促進を促したいというケースでの処方は多いですね」
また、骨や筋肉ばかりでなく、蹄に対して処方を行った経験も松永獣医師は口にする。
「蹄に痛みが認められた馬がいまして、数回に渡って処方しました。あまり蹄に対して処方するケースはないので、角度や強度は自分の経験を踏まえてということになります。すべてということではありませんが、蹄底圧迫やザ跖などによっては炎症を取り除き、痛みがなくなった馬たちがいます」
ショックウェーヴなる機械は、超音波による衝撃波を与え、それにより痛みを取り除き、血行促進を促すことで治癒を促進させるということだ。ただし、多くの関係者がその効果を感じながらも、「完璧ではない」と付け加える。
松永獣医師は「全部が全部ということではありませんが、効果が確認できる馬がいるのは間違いありません。以前にもお話ししたように、競走馬たちはアスリートです。ほとんどの馬たちが何かしらの疾病を抱えながら、パフォーマンスを演じている。そこで、より力を発揮できるようにする手助けとして、ショックウェーヴの需要は増えています」と説明する。
魔法の機械ではないが、現場からの需要の多さこそ、その効果の表れということなのだろう。