HOME » 特集一覧 » 特集

特集

福島向きの馬はどんな馬?

JRA10場はそれぞれのコースに特徴があり、そのコースへの適性の高さで勝敗が決るケースが多い。それでは福島競馬場のコース適性が高い馬とはどんなタイプなのか?
会員の皆様が福島で愛馬が活躍するところを目にするための一助として、探ってみた。

器用に立ち回り好位置を取れる馬

1周1600メートル(芝Aコース)、直線292メールというサイズで、平坦小回りの福島競馬場のレースコース。一般的には、東京(1週2083m・芝Aコース)や京都(1週1894m・芝外回りAコース)と言った大きな競馬場では馬の力通りに決まる傾向が強いとされる。それに対して、小回りコースは力通りには決まらない、つまり〝紛れが多い〟傾向が強いとされている。
ちなみに、JRA歴代単勝最高配当は2014年4月26日に福島競馬場で行われた4歳以上500万下芝1200メートルでの5万6940円であり、複勝も2010年6月26日に福島競馬場で行なわれた3歳未勝利戦芝1200メートルでの3着馬ヴィヴィアンが記録した1万6110円となっている。実際、会員の方々のなかにも、福島競馬場は紛れが起りやすく、荒れる傾向が強いというイメージを持っている方々も少なくないのではないだろうか。
そこで今回は、騎手、そして調教師の方々に福島競馬場に向いていると思われる馬というのはどのような馬なのか聞いてみた。まず、現役騎手で福島で好成績を残している丸山元気騎手は「器用なタイプが良いと思います」と言う。
「芝、ダート云々より、コース形態からは、小脚を使うというか、機敏に動くことができるタイプの方が立ち回りがしやすいです。ペースやメンバーなどにもよりますが、どこの競馬場でもある程度良い位置で流れに乗って行きたいんですけど、そんな中でも福島は直線が短いので、より一層そういうレースができる馬の方が有利になります。直線が長いコースだと上手く立ち回ることができたとしても力通りに決まる傾向が強いのですが、福島では立ち回りひとつ、乗り方ひとつで結果が変わってくる可能性が高くなります。だからこそ、器用なタイプの方が隙を突けやすい。個人的には、乗りやすいコースですし、上手に立ち回って隙を突いていったり、逆にいかに隙を突かれないようにするかというように、いろいろ作戦を立てたりしますので、乗っていて楽しいですよ」
続いて、福島での騎乗が多い丹内祐次騎手は「福島での騎乗は大好きです」と話す。
「基本的に小回りが大好きなんですよね。自分自身としては、芝でもダートでもスピードがある馬が良いと思います。やはり、まずは逃げる馬の後ろの位置を確保したいと思います。芝では追い込み馬は馬場が合わないと脚を使うのがなかなか厳しいですし、ダートではマクって行っても、マクリきれないとキツイ。また、小回りですので良い位置に付けられないと、どうしても中途半端に外、外を回らされてしまうことになって脚を使わされてしまい、直線では余力がなくなってしまいます。確かに、前の位置を取りに行くと乱ペースに巻き込まれることもありますが、そこは勝負ですので、やはり状況に応じて勝つ確率の高いところを狙います」

他場よりもさらにスタートが重要

福島県出身で、七夕賞、ラジオNIKKEI賞と重賞2勝を挙げている田辺裕信騎手は「スタートが上手なタイプ」を挙げる。
「どこの競馬場でも良い位置を取ることができるということは大事です。特に、福島のような小回りではより大事になってきます。最初の位置取りから最後の直線に向かうまでに前に馬がいない状態で自然体で進めることができれば有利ですからね。やはりスタートが大事になります。
あとは、芝コースは開催の序盤と終盤ではガラリと状態が変化して、どの馬にもチャンスがあるような状況になることが少なくありません。元々、小回りで紛れが起きやすいんですけど、馬場の変化への適性の差が加わってきて、より力通りに決まらなくなり、どの馬が来るのか全くわからないという状況になります。それはそれで楽しかったりするんですよね。乗っている方としては力がある馬ならば脚元をすくわれないようにしなければなりませんし、逆に人気馬を相手にどうやってひと泡吹かせようかと隙を狙っていく楽しさがあります。ダートも小回りで紛れやすいというところは同じですね。
それと天気の影響を受けます。雨で馬場が渋ってくると、より先行力が求められるようになります。福島は芝でもダートでも直線に向くときには、差し切れるポジションにいないと間に合わなくなってしまいます。スタートが決まれば良いのですが、後ろからになれば途中で上がっていかなければなりません。どこで脚を使っていくか、いかに脚を溜めながら直線を迎えることができるかが大事になってきます。
あと、本場開催と第3場での開催では、同じ福島ですけど、走る馬たちも違えば、乗っている騎手たちも違いますので、同じ福島コースでも流れなどが全くと言って良いほど違うんですよ。そこはコース云々ではなかったりします」
直線が短い分、スタートを決めて、上手く立ち回ることができるような、器用なタイプが良いということのようだ。
では、調教師の方々はどのようなタイプが向くと思っているのだろうか。08年にマイネカンナで福島牝馬Sを制している国枝栄調教師は「立ち回りが上手なタイプ」と言う。「現行の芝コースで言えば1200メートルの次は1800メートルでコーナーが4つになりますので、小脚が利くようなタイプが良いと思います。逆に、大跳びでジワジワと加速していくようなタイプだと対応が難しくなるのかもしれません。最初のコーナーまで、あるいは勝負どころから直線に向かって、スッと反応できるようなタイプではないと対応するのが難しいように思います」

坂が苦手なタイプが力を発揮しやすい

また、昨年福島で12勝を挙げる活躍をみせた斎藤誠調教師は、スピードのある馬ということに加えて、「坂を気にするタイプ」という。
「大前提として、後手を踏んでしまうと厳しいです。ある程度良い位置で流れに乗ることができないと、外を回らざるを得なくなってしまいがちなので、ゲートの上手なタイプやスピードのある馬が向いているのは確かでしょう。ただ、上手く先行できたとしても、東京や中山だと最後の坂を気にして力を発揮できないタイプもいます。そういうタイプだと小回り平坦の福島では、先行力を活かして、そのまま押し切る、あるいは流れ込むという競馬ができるので、力を発揮できる確率が高くなります。ただ、開催が進むと馬場コンディションが変化してくるので、展開が読み難くなっていきますので、その部分も考慮しながら出走を考えていくことになります」
他では、池上昌和調教師は芝コースに関して「馬場への適性」を挙げる。
「ここ数年、速い時計での決着が目立ちますが、福島に関してはやや時計が掛かるイメージを持っています。以前のように、先行できれば、前にに行ったすべての馬が残る感じではなくなってきていますし、先行力だけではなく少しパワーのあるようなタイプが良いように思います。実際に前残りということで言えば、直線の長い東京でもそういう傾向の開催日もありますので、馬の適性を重視して出走させるようにしています」
では、ダートコースはどうなのだろうか。
こちらに関しては池上調教師も「ダート1700メートルは先行力がないと厳しいように思います」と前置きしながらも次のように話す。
「展開ひとつで後ろの馬にもチャンスが出てくるのも特徴だと思います。同じローカルでいうと新潟は直線が長くてもコーナーがタイトなので、逆に後ろから行く馬は使い難かったりします。後ろから行く馬は福島の方が使いやすいと感じます」
また、斎藤調教師も次のように言う。
「去年福島で12勝を挙げることができたのですが、そのうち8勝がダート1700メートルでした。その多くが先行馬で、斤量3キロ減量の息子(斎藤新騎手)が乗って押し切るというレースが上手くハマりました。上手く先行できたときには、3キロの減量は重要なファクターとなります。ただ、芝コースでも言えることですが、逆に流れが落ち着いたと思うとマクってくる馬が出てきて出入りが激しい競馬になることもあるので、難しいところはあります。足りない部分をコースや乗り役などで補えるところがあり、立ち回りひとつでチャンスが出てきますので付け入る隙がある、それが福島コースの特徴のひとつだと思います」
平坦小回りコースのため、レースが紛れやすく、波乱の結果となる可能性が高いイメージを持たれることが多い福島競馬場。その舞台で求められる特性について、騎手や調教師たちは主にスピードや先行力とともに、動きたいところで俊敏に動いていけるような器用さを重視しているようだ。そして、それにより実力で劣る馬でも逆転可能なコースとして、多くの調教師や騎手たちにとって魅力ある舞台のようだ。

丸山元気 騎手

「小脚を使うというか、機敏に動くことができるタイプの方が立ち回りがしやすい」

丹内祐次 騎手

「芝でもダートでもスピードがある馬が良いと思います。やはり、まずは逃げる馬の後ろの位置を確保したいと思います」

田辺裕信 騎手

「どこの競馬場でも良い位置を取ることができるということは大事です。特に、福島のような小回りではより大事になってきます」

国枝栄 調教師

「小脚が利くようなタイプが良いと思います。逆に、大跳びでジワジワと加速していくようなタイプだと対応が難しくなるのかもしれません」

斎藤誠 調教師

「東京や中山だと最後の坂を気にして力を発揮できないタイプもいます。そういうタイプだと(中略)力を発揮できる確率が高くなります」

池上昌和 調教師

「福島(の芝)に関してはやや時計が掛かるイメージを持っています。(中略)先行力だけではなく少しパワーのあるようなタイプが良いように思います」

» 他の特集を見る

〒960−8114 福島県福島市松浪町9−23
TEL 024−534−1233 FAX 024−531−5517

ページトップへ